食品加工所を開設する

北海道 奥道北でモノ作りを始めた話 ①

執筆者:代表 嶋津 和久

コロナ禍で主事業が影響を受けた折、弊社は再構築助成金の採択を受けました。

当初は、山梨県北杜市に有機農業で就農した元85店長や有機農業従事者のサポートとして、有機JAS認定を受けずとも85[ハチゴウ]の信用で安全な野菜を世に出す事、そして傷物や規格外の野菜を生産者がキチンと収入として得られる事を目的とした食品加工所開設の計画でした。

ですが、人気のある地域なので事業用地が見つからず、また新規就農で生産量も安定しないといった事から、計画が頓挫する状態になりました。

そんな時、85[ハチゴウ]の取引先から紹介を受けたのが北海道中川町でした。スグに町長と担当室長が85[ハチゴウ]二子玉川ライズ店にお越しいただき、お話を伺う事ができました。 話しただけでは町の良さは分からないと思うので、是非一度来て下さいと強くお勧めいただき、スタッフ5人で中川町に伺ったのが2023年5月でした。

そこで目にしたのは、大変近くに豊かで大きな自然がある事、そして町内はキレイに芝刈りされ、自然にも手が入り整備された環境でした。

中川町は東京23区より少し小さい面積を国有林と北海道大学の研究林が多く占めていて、林業が盛んな地域という事もあり、木に対する見識と愛情が大変深く、宿泊したホテル裏山でネイチャーガイドいただいた際には、崖崩れ後の木々の成り立ちや、フロンティアウッドと呼ばれる白樺の役割、川辺での木種の着床など興味深い話ばかりで、学生の頃に感じ得なかった知識欲を刺激されました。

畑作の北限といった土地柄、農業よりも酪農が盛んで、情熱を持たれた放牧酪農家が多く、良質な生乳作りには健康な牛である必要があり、健康な牛を育てるには良質な牧草が必要で、良質な牧草を育てるには良質な土壌が必要な事から、土壌に対する見識も精通されていました。

そうした全ての事が自然と生物、人間の間で循環・共生しており、どちらも健康な状態を求められている事が、まさしく株式会社ハイブ、そして85[ハチゴウ]の理念に通じ、僕たちが目指す環境でした。

帰りの車が出発する際には、役場の方、町民の方たちが両手を振って見送ってくださり、車中では皆が「この町で何か事業をしたい」と思いを同じくしていました。

東京に戻り、社内で中川町での事業化を検討した中では多くの課題・懸念事項があがりました。東京からの移動にかかる時間や輸送にかかるコスト、人を集める難しさも課題でした。

何より、中川町で何が作れるのか?そしてその商品は世に出てお客様が欲しいと思える品であるのか?

今まで中川町で大きな産業が成り得なかったのは、そうした条件があった為だと推察されますが、中川町の魅力を知る事ができた僕らはそうしたハードルを越える熱量がありました。

製造だけで考えれば、採算性は乏しいかもしれません。

では既存の事業と組み合わせて考えてみてはどうか?

弊社のメイン事業であるコンストラクション事業では、業界のイメージから人材採用の難しさといった課題があります。

以前から、コンストラクション事業に於けるDX化と、それによって自分らしい時間の使い方・場所の選び方ができないか?を考えていました。

例えば、リモート業務が可能であれば、夏の酷暑の時は北海道中川町で業務に携わり、休憩時間に牛や羊、自然に癒される環境がここにはあります。

精神的な負担を受けた人に、精神科医は農業を勧めるとの事ですが、土を触るといった事に精神を安定させる作用がある様で、人はやはり自然と離れる事はできません。 日々都会でのストレスフルな生活に疲れてしまった方にも、英気を養うにはとても良い環境です。

その様な制度を作り(※2025年4月現在 制度策定中です)、肉体的にも精神的にも健康な生活を送れる事で、人材を集める事ができれば、コンストラクション事業でも大きなメリットになります。

そうした視点からも中川町での事業に可能性を感じ、2023年8月、空いていた旧幼児センターを購入し、先ずは当初からの計画であったピクルス(中川町で採れた滋味豊かな山菜を利用したり、特徴あるピクルス)の製造から始める為、食品加工施設の開設に向け始動しました。

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