85〔ハチゴウ〕のこと

ぬか床で、今日をちょっと丁寧に。

執筆者:85[ハチゴウ] 鎌田

85[ハチゴウ]という名前、お気づきの方いらっしゃいますか?

発酵文化を発展させた先人達に敬意を込め、発酵をアレンジした名前です。

発酵とは、より良くなる事とし、暮らしがより良くなるモノ・コトを提案いたします。

とはいえ、発酵食品だけを扱っているわけではありません。私たちは6つのセレクト基準に沿った、食品、お酒、アクセサリー、服飾雑貨、食器、ケア用品など「健康や環境にやさしい暮らしを提案する」というフィルターを通し、厳選した商品を取り扱っております。

本日は、[ハッコウ]という名前を掲げているからには、[発酵]の代名詞である[ぬか床]についてお話をしたいと思います。

私たちは8年前に中目黒の高架下でお店をオープンした当初より、「マイぬか床サービス」として、「自分のぬか床を持ちたいけれど、どのように始めたらよいかわからない」、「毎日のお手入れが不安」といったお客様に向けて、お手伝いをさせていただくサービスを行っておりました。サービス自体は現在休止中ですが、初心者向けのキットやぬか床関連の商品を現在も多くご用意しています。

お預かりしていた当時の[ぬか床]

ぬか床は皆さんご存じの通り、健康や美容にさまざまな効果が期待できる健康食です。米ぬかに塩や水、昆布、トウガラシなどを加えて発酵させたものです。微生物が住みつくことで乳酸菌を生み出し、私たちの腸内環境を整えてくれます。日本の家庭で長く親しまれてきた文化食です。

記憶をさかのぼると、私の幼少期もぬか床の思い出があります。祖母宅に遊びに行くと、良く出してくれたぬか漬け。ぬか床は大正生まれの曾祖母の役割でした。慣れた手つきで着物にたすきをかけると、ぬか床を丁寧に混ぜたり、お野菜を加えたりする光景が思い出されます。

食事が進むと「そろそろ温かいご飯を」と、白米と共にぬか漬けとお味噌汁。皆が美味しそうに食べていた光景が、とても懐かしい記憶です。中でも細かく刻まれた古漬けのキャベツの葉、綺麗な色の茄子はご馳走でした。

このように、思い出と共に記憶にも、味覚にも残るぬか床は[食育]の観点からも非常に優れている日本の文化です。その時、その地のものを頂くことで味わえる季節感や、野菜の端までもを大切に頂くことが出来るぬか床は、日本人の[もったいない]という美しい価値観も同時に学ぶことが出来ます。

野菜の切れ端も生かせる[ぬか床]手前は乾燥した大根

私も時々さぼりながらも細々とぬか床生活をしていますが、残念ながら夫は、ぬか床文化に馴染みがなく、この美味しにあまり魅力を感じていないようです。せめて子供達にはと、せっせと日々彼らの味覚に訴えかけています。

そんな中、先日息子の学校で授業参観があり[食育]をテーマにした授業がありました。その内容は、自分の好きな食べ物を当ててもらうクイズ。我ながら、それなりに手間をかけた食事を毎日作っているにも関わらず、息子が選んだ食べ物は[グリルドチーズ]。幼少期を北米で過ごしたため、現地の給食でも出される“それ”は息子にとって特別なメニューなのでしょう。(百歩譲りチーズも発酵食品ですね。)その他のお子さんも、コンビニの[きゅうりの1本漬け]や、お祭りの[じゃがバター]。きゅうりを選んだ女の子のお母様と、苦笑いをしながら帰宅しました。

どんなに手の込んだものや健康的な食事よりも、子供にとって笑顔で食べた“それ”がご馳走なのだと、再認識した体験でした。何事もバランスよく、そして[笑顔で楽しく]が一番のご馳走、ですね。

現代はモノや情報に溢れ、便利な選択肢が限りなく増えています。そんな時代だからこそ

シンプルで古き良き日本の文化である「ぬか床」や「発酵食品」をもっと多くの方に、身近に感じて頂きたいと思っています。

定期的に二子玉川でワークショップを行っているテーブル

私の尊敬する料理研究家の方が[汁一菜でよいという提]を広めています。この考え方は、忙しい現代人に向けて、シンプルで栄養バランスの取れた食事スタイルを提案するものであり、具体的には、ご飯、味噌汁、そして一品のおかずを組み合わせた食事を勧めてくださっています。

料理をする方、食べる方、双方への愛が詰まった優しい提案であり、何より「これでいいのだよ」と、背中を押してくださっているような優しさを感じ、日々励まされています。ほかほかのご飯に、季節のお野菜をいれたお味噌汁、そして一品はぬか床。そんな日があっても良いと思います。過剰な調味料や添加物を使わず、素材や季節を楽しむ。これだけで、心も体も健康でいられると思います。

ある日の朝ごはん

そして同時にぬか床はとてもエコな文化でもあるのです。冷蔵庫に半端に残ってしまった野菜や、しなびかけた野菜などをぬか床に入れることで立派な一品になります。さらにぬか床自体も手を加えながら育てていくため、循環型の食になります。ぬか床には昔の日本人の知恵が詰まった素晴らしい文化なのです。

そして知恵だけではなく、日々の暮らしを豊かにしてくれます。 週末に向けてぬか床に素材を仕込むことで、どのお酒とペアリングをしようかな?そろそろ食べごろかな?と、[待つ時間]も彩ってくれる点もぬか床の素晴らしさです。

インスタグラムではお野菜だけでなく、様々な食材を付けてみる実験なども定期的に行っています。ぜひご覧いただき、皆様もオリジナルなぬか床との生活をはじめてみてはいかがでしょうか?

[ぬか床]研究中。[ぬか床]にニンニクやハーブを入れて鶏肉を仕込みました。

今後はぬか床のワークショップなども企画中です。 是非85[ハチゴウ]と豊かで健康な発酵生活をいたしましょう。

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